中小企業診断士の実務補習(5日間コース実践編)

中小企業診断士試験

 今日もお疲れ様です。ざっくです。

 今回も前回に引き続き、中小企業診断士試験に合格した人であれば多くの人が受講するであろう「実務補習」についてお話したいと思います。

 前回の記事をまだお読みでない方はぜひこちらもどうぞ。

 「まずはここから!中小企業診断士実務補習!(日程、費用、準備編)」

 さて、今回は「実践編」になります。

・実務補習ってなにやるかは知ってるけど実際どうなの?
・実務補習ではどんなことを意識するとよい?
・実務補習で中小企業診断士試験のテキストは使う?

 そんな疑問に私の体験談を踏まえてお答えできればと思います。

<この記事の内容>

・仕事をしながらの実務補習は想像していたよりもきつい
・「何かひとつでも企業の方に刺さる提案がしたい」という姿勢が大事
・中小企業診断士試験のテキストはなくても問題ない

 結論から言うと実務補習は思ったよりも報告書の作成に時間を要するため、睡眠時間が削られてしんどかったです。また、実務補習に向かう姿勢や企業の方の温度感といったものがわからないので不安も多いです。ただ、そんな中でも何かひとつでも企業の方に提案が刺さったときはとても嬉しかったです。

 結果的には「しんどいけどやっておいてよかったな」と思えたのが私にとっての実務補習でした。

 それではここから詳しく話をしていきたいと思います。

<実務補習(5日間コース)の概要>

 本題に入る前にまずは実務補習の概要について簡単に説明します。
 前回の記事(「まずはここから!中小企業診断士実務補習!(日程、費用、準備編)」)とも重複する部分がありますが、読まれていない方もいらっしゃると思いますので簡単におさらいします。

 私が受けた実務補習は令和4年2月に行われた5日間コースです。
 本記事ではこの体験に基づいて実務補習の概要を話します。

【簡単に言うと実務補習(5日間コース)はこんな感じ】

・実務補習は5日間で1社の企業診断を行う。
・企業診断は1班5〜6人で経営戦略担当、財務分析担当など役割分担をして診断を行う。
・役割分担に沿って診断報告書を作成し、企業へ課題と解決策を報告、提案する。

 実務補習はベテラン中小企業診断士の指導員の先生のもと5日間で1社の企業診断を行い、単独ではなく5~6人のグループで企業診断を行います。

 企業診断では、グループのメンバーで「全社的な経営戦略担当」「財務分析担当」「営業戦略担当」「工程管理担当」「組織体制担当」「新事業戦略担当」などといった担当分けを行い、企業診断を実施します。

 これらの担当分けは診断先の企業の特徴を踏まえ、どういった観点で企業分析をするべきかによって変わってきます。

 ちなみに私の場合、この担当分けは指導員の先生が事前に用意してくれていたので、実際にはだれがどの担当をやりたいかというところから決めていく流れでした。

 役割分担が決まれば後はそれぞれの役割分担に応じて「診断報告書」を作成し企業の課題を見つけ解決策を提案します。

 これらを5日間かけて行うのが5日間コースの実務補習です。ちなみに5日間のスケジュールは簡単に挙げるとこんな感じです。

曜日スケジュール
:メンバー顔合わせ&企業ヒアリング
:ヒアリング内容をもとに方向性の決定
日~金:方向性をもとに各自担当の報告書作成
:報告書のすり合わせ、認識にずれがないか確認
:文字の大きさ、書式など体裁の確認、報告書製本
:発表練習、企業へ診断報告書のプレゼンテーション
【実務補習 5日間コース スケジュール】

 上記の通り金、土、翌週の土、日、月というスケジュールになるため、補習の間に1週間、個人での作業時間が発生します。

 この1週間の作業が意外にきつく、これまで診断報告書を書いたことがない私にとってはとてもしんどかったです

 それではここから私が実際に体験した実務補習についてお話していきたいと思います。

<ざっくの実務補習>

【1日目と2日目】

 まずはメンバーと顔合わせを行います。年齢も性別も勤務先もバラバラでとても新鮮でした。

 初対面でしたが同じ試験を乗り越えてきたという強い仲間意識からなのか、すぐに打ち解けることができました。

 個人的な偏見かもしれませんが、不思議と中小企業診断士試験に合格された方は話しやすい人が多いイメージがありますよね。

 さて、メンバーとの顔合わせが終われば早速ヒアリングの準備を行います。
 ヒアリングの時間は全体でおおむね2時間程度です。
 5人グループだとしても1人がヒアリングできる時間は単純計算でたったの24分です。

 この24分という時間、企業の課題と目指す方向を聞くにはあまりにも短いです。

 私は事前に建てた仮説をもとに質問事項を10個程度に絞ってヒアリングに臨みました。

 ヒアリング時は「Aさんが話しているときにはBさんがメモを取る」など、メンバー間で書記を割り振り、漏れのないようヒアリングを行うことが重要です。

 こうして終えたヒアリングをもとに残りの時間で全体の方向性を固めます。

 できれば全体の方向性は1日目のうちに固めておいて、2日目は各自の提案施策の検討までもっていきたいところです。

 ただ、私の時はなかなかうまくいかず、結果として全体の方向性が2日目の終了間際でやっと決まり施策は突貫で決めて後は各自で、、、という形になってしまいました。

 全体でタイムスケジュールをきちんと切り、テキパキと決めていくことが重要だったなぁと今になって思います。

【2日目と3日目の間】

 ここからは怒涛の報告書の作成期間になります。

 ヒアリングで聞いた企業の課題や経営者の思いをもとに、今後企業が目指す方向性や取り組むべき施策について診断報告書にまとめていきます。

 最終的にはグループでひとつの診断報告書をまとめることになりますが、この期間はひたすら自分の担当箇所の執筆を行います。

 1人あたりの報告書の分量は指導員やグループのメンバーの人数によってそれぞれだと思いますが、少なくとも10ページ以上は書くことになるかと思います。

いったん診断報告書を書ききった時のツイート

 この期間は平日のため、昼間は仕事、夜は報告書の作成ととても忙しい日々になります。私自身、相当キツかった記憶があります。

 普段から副業をされている方にとっては造作もないことかもしれませんが、こういった執筆経験のない私は「昼間は仕事を定時に終わらせなければならない」「夜は報告書作成を進めなければならない」と言った感じでだいぶ追い込まれていました

診断報告書を作成してる期間のツイート

 こうしてボロボロにはなりながらも睡眠時間を削って、なんとか期限内に報告書を書き上げました。

 ちなみに、私は「提案する施策はできるだけ具体化しないと相手に伝わらないのではないか」と思ってしまう性分なので、かなり具体的なレベルまで落とし込んだ上で施策の提案を行いました。

 ただこの点に関しては、今思えば施策を少し具体的に細かく書きすぎていたかもしれないな、とも思っています。

 もう一度、実務補習をやるのであれば、ヒアリングで「企業が求める抽象度(具体度)」と「こちらが提供する施策の抽象度(具体度)」に齟齬(そご)がないようキチンと確認するべきだったなぁと思いました。

【3日目から5日目】

 ここまで来ると残りは全体のすり合わせと体裁の確認、診断報告書の印刷製本、企業へのプレゼンテーションになります。

 全体のすり合わせや体裁の確認は単なる作業と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、意外と時間を要します。

 例えば全体戦略では「貴社の強みは○○である」「外部環境が△△になっている」と言っているにも関わらず、いざ個別の施策の話になると「まったく強みにふれていない」「外部環境を踏まえた施策になっていない」など全体の整合性が取れなくなってしまっていることがあります。

 こういった部分があると「診断報告書として結局何が正しいの?何が言いたいの?」というわかりにくい報告書になってしまう可能性があるため、入念にチェックが必要です。診断報告書の信頼性を高めるためにも一貫性のある報告書にしたいところです。

 また、中身だけでなく、事業報告書内での用語の統一や図表番号の振り方など、体裁面での一貫性も必要となってきます。

 「内容は一緒なんだから別に体裁はどっちでもいいじゃん」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、今後、補助金の申請書や事業計画書を作成する際には、審査員の方が何をどこで評価しているかわからないので、こういった体裁面も気を付けるクセはつけておいた方がいいのではないかと思います。

 全体のすり合わせと体裁の確認が終わればその後は印刷と製本作業です。(多くの指導員の方が『マージ』と呼ぶ作業がこのことになります)

 印刷は「kinko’s」のようなコピーサービスを行っている店舗で行うことがほとんどかと思いますので、最寄りのコピーサービス店舗をあらかじめ確認しておきましょう。「印刷をしに行ったらもう営業時間外だった。。。」なんてことのないように場所だけでなく営業時間も抜かりなく確認しておきたいですね。

 そして最終日は経営者の方に診断報告書の内容についてプレゼンテーションをして終了です。最後のプレゼンテーションでどれだけ施策に対する思いを伝えられるか、が重要です。

 私の場合は、具体的な施策を複数盛り込みすぎて少し単調な説明になってしまったかも、、と少し反省しています。

 ただ、反省点はたくさんあるものの、作成した診断報告書を見た企業の方から「とても参考になった、今後の施策にぜひ活かしていきたい」などの声を頂けると大変うれしく思います

実務補習が終わった後のツイート

 5日間という短い期間ではありましたが、実務補習ではとても濃密な経験ができます。
 それを物語るような長い文章で失礼いたしました(笑)

<実務補習中に感じたこと>

 それではここからは実際に実務補習中に感じたことを「やってよかったこと」「やらなくてよかったこと」に分けてまとめていきたいと思います。

【やってよかったこと】

・「何かひとつでも刺さる提案を」という意識で多くの施策を提案する
・「短期ではなく長期でも差別化する」という意識を持つ

「何かひとつでも刺さる提案を」という意識で多くの施策を提案する

 これは実務補習の診断報告書に何を書くべきか悩んでいるときに、私がボソッとつぶやいたところ、指導員の先生に共感いただけた考え方で今でもとても印象に残っている考え方です。

 実務補習を受ける身の私たちは、まだまだ経営コンサルタントとしてとても未熟です。

 そのため、すべての施策が経営者に響くわけがないですし、経営者も忙しいので当然すべての施策ができるわけではありません。

 それでも、何かひとつ経営者の心に刺さるものを提案できれば、それだけで十分成果があったといえるのではないでしょうか。考えすぎないでまずは提案をしてみる!というチャレンジの姿勢が大切なのではないかと思います。実務補習では「最初は未熟で当然。ダメもとで何でも提案してみる!」という姿勢を持ってみるのもありかもしれませんね。

 例えば、ひとつ例を挙げてみると、過去の販売実績を年度別、顧客別にクロス集計して整理し、新規顧客○○%リピート率○○%といった簡単な分析をするだけで「今までこういう見方をしたことはなかった」と経営者に喜ばれることもあります。

 経営者の方は日々の業務で手一杯だったりもするので、こういった些細な気づきを与えてあげるなど、何でも提案してみるのも大事なのではないかと思います。

「短期ではなく長期でも差別化する」という意識を持つ

 これは試験勉強では当然のことではありますが、実際に企業様を目の前にしたときに忘れてしまいがちな考え方です。

 何か新規事業をやろうとしたとき、短期的には差別化が図れており、売上増加が見込まれることは多いです。

 ただ、年月が経てば大企業や競合他社が模倣してくるが予想され、将来的には差別化が図れなくなってしまう、というケースはよくあります。

 中小企業である以上、大企業と市場争いをすれば勝ち目はありません。そのため、自身が勝てる市場を持ち続けられるのか、そのためにはこの市場選択は正しいのか、もっと別の部分を強化した方がいいのではないか、という点を忘れずに持つ必要があるかと思います

 VRIO分析の基本を思い出して、長期的にも差別化できる施策や経営戦略を経営者の方に提案することが大事だと思います。

【やらなくてもよかったこと】

・中小企業診断士試験のテキストを残しておく
・経営者に対して必要以上の情報をヒアリングする

中小企業診断士試験のテキストを残しておく

 この記事を読んでくれている方の中には私と同じように「実務補習で使うかもしれないからテキストはそれまで残しておこう」と思っている方がいらっしゃるかもしれません。

 ただ、この心配は不要だと思います。実際、私の場合は実務補習が始まってしまえば「運営管理のあの方式の名前なんだったっけ?」と思ってのんびりとテキストを振り返っている暇も余裕もなく、必要であればネットで調べるだけで十分な情報が得られました。

 そのため、テキストは無理して長く保管せず、引き取り先があれば早いうちに渡してしまうのもありかと思います。

経営者に対して必要以上の情報をヒアリングする

 経営者の方へヒアリングをしていると思わぬ方向に話が盛り上がってしまい、必要以上に情報や資料をもらってしまうことがあります。

 こういった場合には注意が必要です。

 経営者からすると「ここまで細かい話をしたのだから、何かしらこの問題に対する解決策を提示してくれるだろう」と期待してしまう可能性があります。

 一方で、「色々話してもらったけれども、仮説を立てたところとは全く関係のない話だったため、診断報告書にはまったく使わなかった」となる場合もあります。

 このような意識のミスマッチがあると経営者の満足度も下がってしまうため、必要以上に情報を収集することには注意が必要です。

 私の場合、必要以上の情報を収集してしまったために、その情報を使わなければならず、結果として自分の首を絞めることになった、ということがありました。

 このような事態を避けるためにも、ヒアリングには「もらった情報は使わなければいけない」、「必要以上の情報を収集すると自分の首を絞めることになりかねない」という視点を持って臨むことが大事かと思います。

<おわりに>

 以上になります。いかがでしたでしょうか。

 実務補習は企業へのヒアリングが1回しかできなかったり、複数名でひとつの事業報告書を作り上げたりするなど、通常の企業支援などと異なる部分もあります。

 通常の企業支援であれば、聞きそびれたことがあった場合には別途打ち合わせの機会を設けて再度ヒアリングを行ったりするなどもっと踏み込んでヒアリングすべき点も多々あるかと思います。

 実務補習と通常の企業支援とではこういった違いもあるため、ある程度割り切って「実務補習はあくまで実務補習である」という視点を持つことも必要かと思います。

 実務補習ならではの制約や視点はありますが、これまで中小企業の総合診断を行ったことがない私にとって実務補習は結果的に「しんどかったけどやっておいてよかったな」と思えるものでした。ぜひ1回は受けてみてもいいのではないかと思います。

 これから実務補習を控えてるあなた、また、中小企業診断士試験に受かったあかつきには実務補習を受けようと思っているあなたにとってこの記事が少しでも参考になりましたら幸いです。

ざっく
ざっく

少し見方を変えて、ウェブ解析士の目線から見た実務補習について、こちらでも記載していますので、もしよろしければこちらもお読みいただけますと幸いです。⇒「中小企業診断士の実務補習(Webマーケティングとの相性編)」

 それでは、また。

この記事を書いた人
ざっく

30代半ばの中小企業診断士。
元地方公務員。
部屋着は「はんてん」。
現在は総務をしています。

元地方公務員がスキルゼロから中小企業診断士とウェブ解析士を駆使して「中小企業支援」×「Webマーケティング」で、新たなキャリア形成を目指します。

公務員の仕事・転職、中小企業診断士試験、中業企業支援、Webマーケティングなどについて投稿します。

キャリアに悩む公務員の方や中小企業診断士を目指す方の参考になれば幸いです。

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