中小企業診断士の実務補習(日程、費用、準備編)

中小企業診断士試験

 今日もお疲れ様です。ざっくです。

 今回は中小企業診断士試験に合格した人であれば多くの人が受講するであろう「実務補習」についてお話したいと思います。

 ちなみに本記事での実務補習は、一般社団法人中小企業診断協会が行っている実務補習のことになります。

・そもそも実務補習ってなにやるの?
・実務補習ってどのくらいの期間でいくらくらいかかるの?
・実務補習前の準備って何をしたらいいの?

 そんな疑問にお答えできればと思います。

<この記事の内容>

・実務補習では5,6人が1組になり中小企業の総合診断を行う。
・実務補習は5日間コース(60,000円)と15日間コース(18,000円)がある。
・実務補習前の準備は、徹底的な外部環境分析と業界分析が大事。

 結論から言うと、実務補習は、それなりにお金がかかります。

 ただ、これから中小企業診断士として活動していくうえで必要となる基礎を、ベテラン中小企業診断士のもとで学ぶことができる、とても有意義な補習だと思います。

 それではここからは詳細を話していきます。

<そもそも実務補習ってなに?>

 当たり前のように「実務補習」について話を始めてしまいましたが、まずは「そもそも実務補習とは何なのか」について話をしていきたいと思います。

【実務補習の目的】

 中小企業診断士は試験に合格しただけでは中小企業診断士を名乗ることはできません。試験の合格だけでなく実務経験も必要となります。

 必要となる実務経験は、中小企業診断士二次試験に合格後、「3年以内に実務補習を15日以上受ける」か、「診断実務に15日以上従事する」ことです。

 これらの実務経験を積んだ後、中小企業診断士として登録をして、初めて中小企業診断士を名乗ることができます。

 このように、中小企業診断士として登録する前には企業診断の実務経験を積む必要があり、その実務を経験する場として実務補習があります。

 普段コンサルファームに努めているような方であれば、企業の分析や支援を日常的にやっているかもしれませんが、中小企業の経営者と接点のない方にとってはとても貴重な機会になると思います。

【スケジュール】

 実務補習は5日間コースと15日間コースがあり、開催時期は基本的に2月、7月、8月、9月になります。

 具体的にイメージができるように、この記事を書いている時点での東京地区の直近のスケジュールを記載しておきます。

<令和4年7月・8月・9月実施分>

東京地区

7月コース(5日間コース)
7月8日(金)・9日(土)・17日(日)・18日(月・祝)・19日(火)

8月コース(5日間コース)
8月19日(金)・20日(土)・27日(土)・28日(日)・29日(月)

9月コース(5日間コース)
9月9日(金)・10日(土)・18日(日)・19日(月・祝)・20日(火)

<令和5年2月実施分>

東京地区

15日間コース
2月3日(金)・4日(土)・11日(土・祝)・12日(日)・13日(月)
2月17日(金)・18日(土)・25日(土)・26日(日)・27日(月)
3月3日(金)・4日(土)・11日(土)・12日(日)・13日(月)

5日間コース
2月3日(金)・4日(土)・11日(土・祝)・12日(日)・13日(月)

引用元:一般社団法人中小企業診断協会「令和4年度中小企業診断士実務補習の日程について」

 実務補習では5日間で中小企業1社を診断することになります。(私が受けた令和4年2月時点の情報なので実際は少し変わっているかもしれません。)

 実務補習5日間の中で具体的にどのようなことを行うのか、については、こちらの記事「まずはここから!中小企業診断士の実務補習(5日間コース実践編)」「中小企業診断士の実務補習(Webマーケティングとの相性編)」で話していますので、ぜひこちらも読んでみていただけると嬉しいです。

【実務補習の費用】

 実務補習の受講料は令和4年度に改定され、現在では以下の金額になっています。

<現在の受講料>
15日間コース:180,000円(税込)
5日間コース: 60,000円(税込)

引用元:一般社団法人中小企業診断協会「令和4年度中小企業診断士実務補習の日程について」

 ただ、実際には上記の受講料以外にも、診断先の企業へ提出する「診断報告書」の印刷費用や、協会の用意する会議室とは別に実務補習の指導員の先生がよりアクセスの良い会場を用意してくれた場合はその会場費なども費用として発生してきます。

 もちろんこれらの費用は、ある程度は協会側で負担してもらえますが、全てを協会の負担で賄うことは難しいと思います。そのため、ある程度の自己負担は発生するのではないかと思います。

 また、そのほかにも5日間の昼食代や夕食代、時期によってはグループのメンバーとの懇親会が開催されたりもすると思いますので、これらの費用も必要になってきます。

 私が実務補習を受けた経験から言えば、これらの受講料以外の費用は5日間コースで1万円~2万円くらいかかったような気がします。

 もちろんグループのメンバーや指導員士の先生によってこのあたりは大幅に変わってくると思います。そのため正確な金額は言えませんが、様々な場面で費用が発生することは理解しておいた方がいいかと思います。

【実務補習の内容】

 ここまで実務補習のスケジュールや費用について話をしてきました。
 先ほど「実務補習の具体的な内容については次回の記事で、、」と書きましたが、簡単に概要だけはここでも触れておきたいと思います。

 実務補習では「企業の経営戦略、組織、財務、仕入・生産・販売等の各分野にわたる総合診断」を行います。

 この「総合診断」というところがポイントです。実務補習では単に「売上を伸ばす」「生産効率を高める」「人事制度を作る」といったような企業活動の一部を切り取ってコンサルティングをするのではありません。企業活動のすべてを総合的に企業を診断して、今後の企業の方向性と取り組むべき施策を提案する、というところが実務補習ならではの特徴といえます。

 実際の実務補習では、5,6人が1組になり中小企業の経営者の方から企業の実態をヒアリングし、その情報をもとに企業の現状を踏まえた今後の方向性と施策を記載した「診断報告書」を作成し、経営者の方に説明します。

 まさしく「中小企業支援」と言われる企業診断の醍醐味を味わえる実習ですし、提案した「診断報告書」を喜んでもらえたときは本当に嬉しいです。

 実習中は仕事と実習を両立することになるためとても大変ですが、とてもやりがいがあるものなので、一度は経験してみることをお勧めします。

【実務補習で私が感じた感想】

<これから実務補習を受けるけど何の準備をしたらいい?>

 さて、これまで実務補習全体について書いてきましたが、この記事を読んでくれた方の中には、これから実務補習を受講する予定の方もいらっしゃるかと思います。

 そんなあなたの少しでもお力になればと思い、私が実際に行った実務補習に向けた準備について、ここから話をしていきたいと思います。

【何のために準備する?】

 実務補習に向けてそもそも準備っているの?と思う方もいるかもしれません。

 ただ、経営者と話をするのであれば、業界に対する知識や業界が抱える課題を把握している必要があると言えます。

 もちろん経営者の方はその道で何年も経営を続けていらっしゃる方なので、どんなに勉強をしても経営者には及ばないかもしれません。

 しかし、経営者の方に施策を提案をする以上、きちんと業界の基礎知識や常識を押さえておく必要があります。

 少なくとも経営者の方に「そんなことも知らないのか」と思われない程度には業界について調べておく必要があると思います。

 可能であれば業界や診断先の企業について仮説が立てられるレベルまで調べておくとなおよいのではないでしょうか。

【私が実際にした準備】

 ここからは私が実際に実務補習前に行った準備を書きます。

 簡単に言ってしまうと、やることはひとつで、「徹底的な診断先企業の分析と企業が抱えている課題の仮説を立てる」ということなります。

 ただ、それ以外にも細かい準備などもしたので、「やってよかった準備」「やらなくてもよかった準備」「やっておけばよかった準備」の3つに分けて書きます。

やっておいてよかった準備

 まず、やっておいてよかった準備として以下のものがあります。

・業種別審査辞典を読む
・診断先企業のHP、ブログ、ニュースリリースを読む
・指導員の先生が事前に提供してくれた資料を読む
・企業ヒアリングにおける質問項目の作成

 これらは業界分析と企業分析を行うために実施したことです。
 順番としても

  1. 業種別審査辞典を読んで業界における一般的な知識、課題を身に付ける
  2. 診断先企業のHPや指導員が提供してくれた資料などを見て、一般的な同業種との違いを探す
  3. これらの違いをもとに差別化できそうなポイント、もしくは同業と比べ劣っているところを探し、企業ヒアリングの際に聞く質問項目を作成する

 といった順番でやる方法が一番とっつきやすいと思います。

 これらを踏まえて、最後の質問項目の作成では「最終的にどういう結論に持って行きたくてこの質問をしているのか」というところを意識して、ヒアリング本番にできるだけ無駄なく経営者の方に質問をしたいです。

 というのも、実務補習のヒアリングの中で自身が質問できる時間は20~30分程度で、質問できる項目の数は10個前後になるからです。

 ちなみに私は質問を20個ぐらい考えて、ヒアリングでどれを聞こうか選別するのが大変でした。。。あまり質問項目を作りすぎるのもよくないかもしれません。

 できるだけ聞きたい結論から逆算して、少ない質問で的確にヒアリングすることを心掛けるとより良いと思います。これは実際に中小企業診断士として活動していく中でも活きてくる能力になるのではないでしょうか。

 なお、指導員の先生からはおおよそ実務補習の開始前1週間くらいに診断先企業の情報が送られてくることが多いと聞いています。

 当然、指導員の先生によって診断先企業の情報が送られてくるタイミングはそれぞれなので、全てが完璧に準備できるとは限りません。できる範囲で準備を進めることをお勧めします。

 初めてなのでうまくいかないのは当然です。そのためうまくやろうとするよりも、下手でもいいから一生懸命やろうとする姿勢を持つことが大事だと思います。

 【実務補習で私が感じた反省①】

 ちなみに上記以外にも事務的な部分でやっておいてよかった準備があるので以下に少し記載します。

・Dropboxアカウント作成

 これは事前にTwitterをやっている中で先輩診断士の方から聞いて行ったことですが、ファイル共有ソフト「Dropbox」のダウンロードです。

 支援先企業の情報共有や作成した診断報告書の共有にはDropboxを用いることが多いようです。指導員の先生から「では必要なデータはDropboxで共有します」という話が突然出るくらい、中小企業診断士の界隈では使われているものなのかもしれません。

 無料でダウンロードできるものでもあるので、まだお持ちでない方はDropboxのホームページからダウンロードしておくといいかもしれません。

・予備校の実務補習セミナーを流し聞き

 こちらは気持ちの準備、という意味で入れさせていただきました。

 Twitterやブログ、そのほか知り合いの中小企業診断士の方と交流があり、事前に実務補習とはどういったものか、という情報収集ができている方であれば不要かもしれません。

 実務補習のイメージが全く沸いていない!という方には、いったん流し聞きでもいいので予備校の実務補習セミナーを聞いておくことをお勧めします。ちなみに私はTAC様の実務補習セミナーを聞きました。こちらは会員登録も不要で、無料で見られるので実務補習の気持ちの準備をする上ではオススメです。

やっておかなくてもよかった準備

・個人用名刺の作成
・担当分野以外の改善施策の検討

 これらは自分が実際にやってみて、必ずしもやらなくてもいいかなと思ったことです。とくに「個人用名刺の作成」は本当に不要でした(笑)

 実務補習ではメンバーとの名刺交換は、基本的に会社の名刺で行いますし、診断先の企業様とは名刺交換はしません。

 私は個人用の名刺を作ってメンバーに渡しましたが、なんというか、張り切っている感が出てしまって少し恥ずかしかったです。(笑)

 それに実務補習期間中は、まだ中小企業診断士として登録をしていないので、肩書きは「中小企業診断士(登録前)」と入れざるを得ないため、名刺の消費期限がとても短いです。

 結局、私も実務補習以外では配る機会もなく、そのあと間もなく中小企業診断士として登録されたので、もはや使う機会がありません(笑)

 また、担当分野以外の改善施策については、色々と考えるのは楽しいですが、最終的には担当となった人が自分で提案したい施策を決めます

 思い付きのことを言っても担当の方を混乱させてしまう恐れがあるため、個人的にはあまり担当外のことは細かいところまで考える必要はないのかな、と思いました。

 ただ、聞いた話では改善施策は担当が決めるのではなく全員で考える、というスタンスで行われるケースもあるとのことでしたので、たまたま私のグループでは意味がなかっただけで、グループによっては必要な場合もあるかもしれませんね。

やっておけばよかった準備

・報告書を書くための画面が大きめのPCの用意

 これは切実にやっておけばよかったと思いました。

 実務補習ではそれなりの分量の報告書を書くため、長時間作業しても苦ではない大きさのPCを用意することを強くお勧めします。

 私は普段10インチのPCでブログなどを書いたりしているため、特に気にせずこの10インチのPCで実務補習を迎えました。

 しかし、実際に「報告書を作る」という作業を実施したところ、3時間も4時間も作業するには、10インチのPCではあまりに画面が小さくとても目が疲れました

 このように画面の小さいPCでは報告書の作成にとても苦慮するので、画面の大きさは、普段自分が仕事で使っていて苦にならない大きさのものを用意しておくことをお勧めします。

【実務補習で私が感じた反省②】

 ちなみにこれはTwitterで他の診断士の方を書き込みを見て感じたのですが、実務補習を機に新しくPCを買う方もいらっしゃるようでした。

 これからの中小企業診断士ライフに向けて、これを機に自分の相棒PCを購入するのもありかもしれませんね。

<おわりに>

 以上になります。いかがでしたでしょうか。

 実務補習は準備段階からすでにやるべきことが盛りだくさんで、補習がスタートすると、さらにバタバタと忙しくなります。

 「忙しくもなるし、費用も掛かるし、いったい誰がこんな研修受けるんだ。。。」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 ただ、この実務補習での経験は今後きっと役立ちますし、私自身、実務補習を受けて本当に良い経験ができたと思っています

 なにより診断先の企業様のことが大好きになり、こういう風に思える企業をもっと作りたい、と思えるようになりました。

 必要な実務経験15日すべてを実務補習で満たすかどうか、はそれぞれの事情によるかと思いますが、私は少なくとも1回は実務補習受けてみるのが良いのではないかと思っています。

 ご興味があればぜひご検討いただければと思います。

 長くなりましたが、この記事がこれから実務補習を受けようとしているあなたにとって、少しでも参考になりましたら幸いです。

 それでは、また。

この記事を書いた人
ざっく

30代半ばの中小企業診断士。
元地方公務員。
部屋着は「はんてん」。
現在は総務をしています。

元地方公務員がスキルゼロから中小企業診断士とウェブ解析士を駆使して「中小企業支援」×「Webマーケティング」で、新たなキャリア形成を目指します。

公務員の仕事・転職、中小企業診断士試験、中業企業支援、Webマーケティングなどについて投稿します。

キャリアに悩む公務員の方や中小企業診断士を目指す方の参考になれば幸いです。

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